教育の公的助成金について1

教育の公的な助成金についてシリーズで書いていきます。
社員に教育をしていきたいが講師を呼ぶと費用がかかる、更には業務時間外のOFF-JTについても昨今は残業代の支払いが必要など、社員の教育には何かとお金がかかります。
こんな時、強い味方となるのが公的な助成金や補助金です。
今回は、全国の事業所で使える厚生労働省の”人材開発支援助成金”の内容を確認しようと思います。

人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金とは、厚生労働省が管轄する助成金で、職業訓練開発に伴う経費・賃金の一部を助成する公的制度です。
制度は年々改善が加えられています。例えば、今年度(2019年度)からは、経費助成のみ(賃金助成なし)となりますが、eラーニングも助成対象に加えられました。

制度の概要

厚生労働省の発行する冊子”人材開発支援助成金のご案内”(H31版)によると、制度の概要を以下のように説明しています。

人材開発支援助成金は、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を効果的に促進するため、事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度

出典元:人材開発支援助成金のご案内(H31版)

要約すると、以下のようになります。

  1. 職務に関連した知識や技能の習得させるための職業訓練等に対して助成
  2. 計画に沿って実施する
  3. 訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する

1.の職務に関連という部分については、職務外の趣味的な学習は対象外という意味ですので、あまり気にする必要はないでしょう。
2.の計画に沿って実施するについては、PDCA的な仕組みの構築を意味しています。具体的には、訓練の推進者を任命し、能力開発計画を策定、セルフキャリアドックと呼ばれる振り返りを制度化する必要があります。
3.は訓練経費や賃金の全額ではなく一部を助成するという意味です。
具体的な内容は後述します。

助成金の種類(コース)

助成金には、下記4つのコース(種類)があります。

コース内容
特定訓練コース主に若年層に対する10時間以上の訓練
一般訓練コース特定訓練コース以外の20時間以上の訓練
キャリア形成支援制度導入コースセルフキャリアドック制度、教育訓練休暇制度の導入・実施に対する助成
職業能力検定制度導入コース技能検定制度、社内検定制度、業界検定制度の導入・実施に対する助成

上記のうち、一般的に使いやすい(申請のハードルが低い)のは”一般訓練コース”です。以降は、一般訓練コースについて具体的に見ていきます。

一般訓練コースの内容

それでは、一般訓練コースの支給要件、助成額、申請方法を見ていきましょう。

支給要件

支給要件は、下記6つとなります。

  1. 雇用保険適用事業所であること
  2. 職業能力開発推進者を選定すること
  3. 職業能力開発計画、年間職業能力開発計画を作成し周知していること
  4. 職業訓練期間中に所定の賃金を支払っていること
  5. セルフキャリアドックを規定すること
  6. 中小事業主であること

1(雇用保険の適用)、4(訓練期間中の賃金支払い)についてはクリアしていると思います。
6の中小事業主についても情報通信業や情報サービス業の場合は、資本金3億円以下か従業員数300人以下のどちらかを満たせばOKです。
問題となりそうなのは、2(開発推進者の選任)、3(開発計画の作成と周知)、5(セルフキャリアドック)ですね。この3つの要件を確認していきましょう。

要件1 職業能力開発推進者の選定

厚生労働所から発行されている制度導入マニュアルには、職業能力開発推進者について以下のように書かれています。
結論的には、人事の責任者を選任します。

職業能力開発推進者は、社内で職業能力開発の取組みを推進するキーパーソンであり、具体的には、事業内職業能力開発計画の作成・実施や、職業能力開発に関する労働者への相談・指導などを行います。
※ 職業能力開発推進者の選任に当たってのポイント
1.従業員の職業能力開発および向上に関する企画や訓練の実施に関する権限を有する者
2.事業所ごとに1名以上

出典元 人材開発支援助成金制度導入活用マニュアル(厚生労働省)

要件2 事業内職業能力開発計画の作成

事業内職業能力開発計画は、以下の事項を含み労働組合または労働者の代表と調整済みであることが必要です。
労働局へ提出する訓練計画には、労働者の代表の捺印が必要です。

  • 経営理念・経営方針に基づく人材育成の基本的方針・目標
  • 昇進昇格、人事考課などに関する事項
  • 職務に必要な職業能力などに関する事項
  • 教育訓練体系(図、表など)

要件3 セルフキャリアドックを規定

3つ目の要件は、”セルフキャリアドックを規定すること”です。
厳密なセルフキャリアドック制度は、ジョブカードを作成し、定期的にキャリアコンサルタントの面談を受けるというものです。これはかなりの手間や費用がかかります。
しかし、一般訓練コースの要件は上記のような厳密なものではなく、以下のように社内で完結できる仕組みの構築でよいことになっています。時期の定義もないため、セルフキャリアドックの実施は3年に一度でも問題ありません。

労働協約、就業規則又は事業内職業能力開発計画のいずれかに、セルフ・キャリアドックの実施(定期的なキャリアコンサルティングの機会の確保)について対象時期を明記して定めていることが必要です。
キャリアコンサルティングを実施する者は国家資格を有しているキャリアコンサルタントに限りません。
・キャリアコンサルティングについての経費は事業主が全額を負担する必要があります。

出典元 人材開発支援助成金のご案内(厚生労働省)

申請方法

申請は、以下の流れとなります。

前準備
職業能力開発推進者を選任、事業内能力開発計画の策定
都道府県労働局へ訓練計画を提出
訓練計画を作成し訓練開始の1か月前までに訓練実施計画届(定型)と必要書類を提出
訓練の実施
講習会などの訓練を行います
都道府県労働局へ支給申請書を提出
訓練終了日から2か月以内に支給申請書(定型)と必要書類を提出します。
助成金の支給
審査後支給・不支給が決定されます

助成額

助成額や助成率は、以下の表のようになります。

出典元:人材開発支援助成金のご案内(H31版)

注意が必要なのは、助成金には上限があることです。

  • 賃金助成は、1人年間1,200時間が上限(380円の場合は456,000円)
  • 事業所としては年間500万円が上限
  • 経費助成は、1人あたり100時間まで7万円、200時間まで15万円、それ以上は20万円が上限
  • 経費助成のうち講師費用は、時間当たり3万円が上限、旅費は5万円、宿泊費は1.5万円がそれぞれ上限

支給額の試算

例えば、半年で6人に対し48時間の教育を実施し講師費用が100万円かかったとします。
その場合の賃金補助は、以下の計算になります。
賃金助成額=380円×48時間×6人=109,440円

次に経費補助です
経費助成額=1,000,000円×30%=300,000円
※上記は、経費助成の1人当たり7万円(6人で42万円)を超えないのでそのまま支給

今回のケースでは上記の合計、409,440円支給されます

まとめ

ここまで制度の概略を見てきましたが、それほど手間もかからず、しかも社内にプラスに働く仕組みを構築することで、助成金を申請できそうです。
次回は、具体的な手続きや申請書類の書き方を見ていきたいと思います。