【2021年空総監受験】出題パターン2ーコラム問題の解き方
いよいよ9月になりました。
試験日までには、まだ週末が3回もあります。
今回の記事では、出題分析7パターンのうちの”コラム問題”について解説します。
- 実務実績問題
- コラム問題 <<== 今回はココ
- アカデミック系の問題
- 知識系の問題
- 行政課題解決問題(パワポ)
- タイムリーな課題解決問題(パワポ)
- その他の問題(パワポ)
出題例
コラム問題は、以下のような出題(H28年度問1)形式となります。
別紙として配布されるA4サイズ2枚程度のコラムを読み、ワード1ページ(1ページ36行・40文字、合計1,400文字程度)に答案をまとめます。
今回の題材
今回は、以下を題材として答案例を作成していきます。
原文(引用元)
月刊『測量』2020年6月号
青山学院大学地球共生学部 村上広史教授
「高精度測位の時代=測量の時代」より
コラムの概要
- 測位と測量が技術的に融合する時代となった
- 電子基準点やGNSS連続観測局などの高精度測位においては、座標系が統一された「国家座標系」が重要
- 測位と測量の融合は測量事業者に影響を与える
- 測量の歴史と現代社会における測量の重要性
- 国土地理院のような機関は他国に例がない
- 測位技術の発達は健康寿命の延長に効果がある
問題で使用した”別紙”全文の掲載は著作権の問題などがあり掲載できませんが、日本測量協会の会員であれば、バックナンバーをダウンロードできます。
コラム問題で問われていること
この問題では、空総監として相応しい知識や思考力、文章力が問われています。
今回の題材のように、幅広い知見をベースとして歴史観や業界への影響、果ては社会問題にまで踏み込んだようなコラムの場合は、受験者としては的を絞りにくく難しい問題となります。
この対策としては、主題を決めてコラムの一部を切り取るような形で、自身の得意分野に持ち込む答案作成が有効となってきます。
具体的には、まず主題(主張の柱、文章の背骨)を決め、コラムからピックアップする話題を抽出し、技術的な解説や考察を盛り込んで完成させていきます。
答案例
答案例は以下のようになります。
受験番号:21−006、氏名:高本 啓司 設問の資料“高精度測位の時代=測量の時代”(以降、本資料)は、高精度な測位技術が普及し、測位と測量が技術的に融合して市場が拡大していくこれからの時代における測量の在り方や考察が述べられている。以降に、空間情報技術者の立場で取り組むべき課題と理由、今後の展望について述べる。 1.高精度測位時代に取り組むべき課題と理由 一つ目の課題は、測量成果や測位の国家座標への統一である。例えば、みちびき(QZSS)のセンチメータ級測位補強サービスなどを使って測位した座標は、測位時点の座標であり地殻変動などの影響があるため、国家座標(JGD2011)との間で誤差が生じる。このため、現在の測位結果からJGD2011測位時点の座標に変換する“セミ・ダイナミック補正”などにより補正を行う必要がある。しかしながら、位置情報サービスを提供する民間の技術者にその意識が十分とは言いがたいのが現状であるため、空間情報技術者の立場として、定時地殻変動補正システム(POS2JGD)といったツールを使うなどして、その普及に努めるべきであると考える。 二つ目の課題は、測位の精度や性能の保証である。例えば、通信キャリアなど民間が位置情報サービス提供のために設置する民間の電子基準点(GNSS連続観測局)の位置精度や性能にばらつきがあると、そのサービスに信頼がおけなくなってしまう。この対策として、国土地理院による民間電子基準点登録制度が2020年4月から開始されているが、空間情報技術者の立場としては、精緻な位置情報を扱う目的と、オルタナティブデータなど高い精度が求められないデータの棲み分けを行いつつ制度の普及に努めるべきであると考える。 三つ目の課題は、地図作成に関する国家座標に準拠である。測位結果が国家座標に準拠していたとしても、GIS等の背景地図として使用する市販地図が国家座標に準拠していなければ、位置ずれなどを起こしてしまう。この対策としては、携帯電話やカーナビなどの機器メーカー、データを供給している地図調整業者などの関係者を巻き込んだ取り組みが必要である。空間情報技術者の立場としては、時地殻変動補正システムといったツールを使うなどして、市販地図と測位情報のズレを補正する取り組みが必要と考える。 2.今後の展望 ここまで、国土地理院による高精度な測量や測位に向けた包括的な取り組みを確認した。また、民間の位置情報ビジネスや地図調整業者の作成する市販の地図データについては、位置精度などの品質保証が課題となっていることも確認した。 今後は、このような国家座標の普及や位置精度の保証などの取り組みを、民間活力を阻害せずに進めていくことが必要と考える。また、自動運転などにおいては、国家座標に加えてリアルタイム座標の利用も重要であることから、時地殻変動補正システムをより高度化してリアルタイムに座標変換を行うなどの取り組みも必要になると考えている。 以上
上記答案は、約1,200文字、ページ数は1ページとなります。
答案作成のポイント
答案作成のポイントは以下の3つです。
- 主題を決める
- コラムの話題をすべて網羅しようとしない
- 意識的に技術解説や考察を盛り込む
主題を決める
1つ目のポイントは、主題を決めることです。
再度、今回の題材のコラムの概要を示しますが、話の軸はしっかりしているものの話題としては広範囲になっていることがわかります。
- 測位と測量が技術的に融合する時代となった(”つかみ”の部分)
- 電子基準点やGNSS連続観測局などの高精度測位においては、座標系が統一された「国家座標系」が重要(おそらく主題)
- 測位と測量の融合は測量事業者に影響を与える(業界の話題)
- 測量の歴史と現代社会における測量の重要性(歴史や文化のような話題)
- 国土地理院のような機関は他国に例がない(国家の歴史や文化)
- 測位技術の発達は健康寿命の延長に効果がある(測量と健康)
カッコ内は私の主観による分類ですが、このように発散した話題の1つ1つに感想や意見を述べていったら、答案に必要な文字数は膨大となります。
さらには、完成した答案が”主題のない発散した意見や感想文”に成り下がってしまい、採点者に知識、思考力、文章力が伝わらない結果となってしまいます。
ですので、まずは主題を決めましょう。
この主題を軸として、技術解説や考察で肉付けしていきます。
なお、コラムの主題は”測位技術が及ぼす社会的な影響”といったところだと思いますが、これは無視しても構いません。
自身の観点で答案を構成し、コラムからは必要な部分を切り取って書くイメージが重要です。
答案例では、”高精度測位時代の課題と今後”を主題として、コラム内のキーワード等に触れつつ展開しています。
コラムの話題をすべて網羅しようとしない
2つ目のポイントは、コラムの話題をすべて網羅しようとしないことです。
今回の題材では、主題はある程度はっきりしているものの話題が発散しているため受験者泣かせの問題だといえます。
答案内で、この”発散した話題”をすべて網羅しようとすると、採点上重要な知識や思考力を表現できないまま文字数上限に達してしまいます。
ですので、ここは大胆な取捨選択が必要となります。
答案例を見ていただくと、歴史や文化、国家の話、業界の話には一切触れていません。
触れているのは、”高精度測位”、”国家座標系”のみとして、その部分を深掘りしたり技術解説を加えたりして、知識や思考力を表現しつつ答案を仕上げています。
話題を捨てることは、ちょっとした勇気がいるのですが、答案はたった1,400字ですので、話題を絞って浮いた文字数を使って知識や考察を記述した方が高得点が狙えると思います。
意識的に技術解説や考察を盛り込む
3つ目のポイントは、意識的に技術解説や考察を盛り込むことです。
設題には、”知識、思考力、文章力等を問う”と明記されていますが、噛み砕くと以下のようになると思います。
- 知識 :技術的な知識や見識
- 思考力:知識を基礎とした考察力や説明力
- 文章力:第三者に伝をる文章を書く能力、整理力
答案が、コラムの”感想や意見”に終始してしまうと、文章力しかアピールできなくなります。
知識や思考力もアピールするためには、意識して答案に知識(技術解説)と考察を盛り込んでいかなければなりません。
答案例では、以下のような知識や考察を盛り込んでいます。
- ”国家座標への統一”の話題を深掘りしつつ、QZSSやPOS2JGDといった関連知識を表現(知識)
- ”測位制度の保証”の話題から、民間電子基準点登録制度の話題に展開し精度による棲み分けについて言及(知識、考察)
- 測位結果と市販地図との位置ずれや補正について言及(考察)
- 国土地理院の活動が民間活力を阻害しないことやリアルタイムの国家座標系への変換などちょっと大胆な意見(考察)
まとめ
今回は、コラム問題の答案例を解説しました。
試験テクニック的にコラム問題では、文章の作成能力が問われています。
対策としては、過去問の答案を作成し、文章作成能力を上げていく取り組みが有効だと思います。
特に、主題により一貫した文章構成とすることがとても重要だと思います。
また、答案中に盛り込む知識については技術のキーワードの整理が有効ですし、考察を作成するためにはニュースや業界紙などから時事の話題をピックアップしておくことも有効です。
空総監試験ではパソコンが持ち込めますので、ネットで気になったニュースはPDF化して保存し、試験当日に参考とすることもできます。
次回は、”アカデミック系の問題”を解説します。
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