空総監対策8−2015年問2
今回は、空総監試験の2015年度の問2にチャレンジしてみましょう。
問題
問題を以下に引用します。
回答案
では、答案を作成してみましょう。
学習方法と1つ目の技術については以前掲載した内容と同じです。
今回は、2つ目の最新技術にてういて、みちびき関連の情報を書きました。
受験番号:20−055 氏名:高本 啓司
(36行✖️40文字)
設問1 空間情報技術の研究・技術開発動向の把握・学習方法
私は、電機メーカーの技術者として警察向けの通信指令GISの開発と運用に従事している。さらに、会社の許可を得て個人の技術士事務所を兼職で運営している。
現在、私が担当している警察業務では自社製のGISエンジン(製品名:Quadrix)を採用しており図形データは専用の形式で描画部分も内製している。このことはGISの内部に関する技術力が必要な反面、一般に普及しているGISの利用やデータ交換などには不利に働きがちで、この点を補うことを重視して最新技術の把握や学習を行っている。
ア 空間情報技術の研究・技術開発動向の把握方法
私は、空間情報技術の研究・技術開発動向について、定期・不定期に分けて情報収集・把握している。
定期的な方法は、国土地理院が発行する地理院広報や地理院時報、ESRIジャパン社が定期的に更新する最新事例紹介、GISを専門とする方のTwitter、日本経済新聞の企業欄や産業欄、インクリメントピー社やESRIジャパン社などの同業者からのメーリングリストなどで情報を収集している。
次に、不定期な方法は同業者からの情報交換や展示会が中心となる。具体的には、業務上の取引先であるゼンリン社や昭文社、ナビタイム社との情報交換の中で最新のソリューションや研究成果などの情報交換を行っている。展示会については、年1回開催される“G空間Expo”や“地図展”、警察関係の“保安電子通信協会セミナー”には参加し情報収集している。
このような情報収集の結果、興味ある情報があれば、主にインターネットを使って情報や論文、事例などを収集しより深い知識を取得している。
イ 学習方法
次に、学習方法について述べる。先程説明した方法で情報を収集し興味ある情報を選別してより深い知識を取得した後に、現在や将来の業務に直接役立ちそうな情報があれば、これを学習し応用できる程度にまで学習している。具体的には、QGISやMapWinGIS、OpenJUMPといったオープンソースのGIS、同様にPostGISやSpatialiteといったオープンソースのデータベース、GDALなどの空間情報処理ライブラリなどを、JavaScriptやPythonといった言語によるプログラミングを通して検証し学習している。
実例を1つ挙げると、オープンソースGISの学習を開始した当初は、“入門Webマッピング”という書籍を購入し全体像を把握した。この書籍には、前述のGDALをはじめMapServerやPostGIS、Grassなどについて実例を交えて詳細に紹介されている。私の場合は、この情報をもとに検証用のデータをG空間情報センター上に公開されている自治体のオープンデータや政府の統計GIS、国交省の国土数値情報などをダウンロードし、Python言語を使って加工してPostGISへ投入、そのデータをMapServerとOpenLayersを使って地図表示することで、概ねWebGISの仕組みを学習し理解することができた。
設問2−1 最近注目する新技術1 ベクトル地図タイルとその配信技術
(35行✖️40文字)
私が最近注目する1つ目の新技術は、インターネット上でベクトル地図データを配信し表示する技術である。この技術は、米国Mapbox社が中心となって仕様が策定されオープンソースという形でライブラリなどが流通している。以降に詳細を説明する。
ア ベクトル地図データの仕様と配信
地図データはMapbox社が定めたMVT(Mapbox Vector Tile Format)形式がデファクトスタンダード化しつつある。MVTは、地図の図郭をGoogleMapと同じWebメルカトルで投影されたXYZタイルを採用し、各タイル内に収容される図形をGeoJSON形式の表現内容をGoogle社が仕様化したProtocol Buffersを用いて符号化している。さらにその情報をGZIP形式に圧縮することで、元のGeoJSONの1/10以下にまで圧縮させてインターネット上をベクトル地図データが流通しやすくしている。
また、MVTのままでは地図の1タイルが1ファイルとなってしまうためファイルの数が大量となってしまう。これを取り扱いやすくするため、複数のMVTを1つのデータベース(SQLite形式)に収容できる。これは、MBTILESと呼ばれる仕様でMapbox社により策定された。
次に地図データの配信であるが、MVTであればWebサイトに配置するだけで配信できるが、MBTILESの場合は配信専用のサーバーソフトウェアが必要となる。何種類かのオープンソースが存在するが、使い勝手が良く多機能なのはMapbox社のTileServerGLである。これは、JavaScriptで作成されておりApacheやNGINXなどのWebプロキシと組み合わせて使用するのが一般的である。
イ 地図データの表示
ブラウザへの地図表示については、Mapbox社からMapboxGLJSと呼ばれるJavaScriptによる描画ライブラリが提供されている。また、iOSやAndroid用、Qt(キュート)と呼ばれるWindows、Mac、Linuxで使用可能なネイティブライブラリもオープンソースで提供されている。MapboxGLJSにおいては、ブラウザに実装された3Dライブラリ(WebGL)を使用することで、非常に高速な3D表示が可能となる。
また、表示スタイルの編集にはMaputnikと呼ばれる専用のスタイルエディタもオープンソースとして提供されている。
ウ この技術に注目する理由
この技術に注目する理由は、現在の担当業務で使用している自社製GISエンジンにこの技術を適用することで、QGISによるデータ加工やブラウザによる地図表示、3D地図表示など、これまで投資できずに実現できなかった機能を拡張することができる。具体例を挙げると、QGISの様々な編集機能を使って警察署管轄データの編集や地理的な分析が可能となることや、3D地図による通報場所特定など、お客様へ提供する価値の拡大が期待できるからである。
設問2−2 最近注目する新技術2 みちびきの測位等の技術
(36行✖️40文字)
私が最近注目する2つ目の新技術は、準天頂衛星みちびき(以降、QZS)を使った測位等のサービスである。QZSというと、単独測位で誤差数センチメートルの精度が得られる“センチメーター級測位補強サービス”が注目されるが、実際には他にも有効なサービス(技術)が提供されている。私が注目するサービスは、サブメータ級測位補強サービスと災害・危機管理通報サービスである。以降に詳細を説明する。
ア センチメータ級測位補強サービス(CLAS)の得失
センチメータ級測位補強サービスは、国土地理院が全国に整備している電子基準点を用いてGNSSごとの補正情報を計算し、現在位置を正確に求めるための情報を配信し単独測位における測位精度を数センチに向上させる技術である。この技術では、QZSからのL6信号を使った干渉測位を行う。このことから、大きめのアンテナに接続した専用のレシーバーが必要で、さらにはレシーバーの価格の問題もありモバイル機器での利用が難しいのが現状である。
イ サブメータ級測位補強サービス(SLAS)
サブメータ級測位補強サービスは、基準局にて求められたGNSS衛星ごとの電離層などによる測位誤差の補正情報を、GPS等で普及しているL1C/A信号と同じ形式のL1S信号を使用して配信するサービスである。この信号を使って誤差を相殺することにより、通常のGNSSレシーバーの誤差である10メートル程度を、1メートル以下にまで高めることができる。このサービスのメリットは、現在普及しているGNSS受信機に改良を加えることでL1C/A信号を受信することができるためモバイル機器などへの急速な普及が期待できる点である。
ウ 災害・危機管理通報サービス
災害・危機管理通報サービスは、防災機関から発表された地震や津波といった危機管理情報や気象庁からの災害関連情報をQZS経由で配信するサービスである。このサービスは、サブメータ級測位補強サービスと同じくL1S信号を使用し、4秒間隔で災害情報などを送信するサービスである。このサービスにより、災害発生時に災害情報等を音声や文字で通知することができる。
エ この技術に注目する理由
これらの技術に注目する理由は、QZSSからのL6信号の受信が必要なセンチメータ級測位補強サービスに比べ、両サービスとも現在普及しているL1C/A信号と同じ形式のL1S信号を使用しているために普及に時間がかからない点に加え、昨今多発している線状降水帯による災害発生時の情報提供ソリューションに活用できるのではないかと考えるからである。具体的には、災害発生時にジオフェンシングを使ったピンポイントな避難勧告の発令に災危通報を使用し、実際の被災者の位置特定にSLASを使って救助作業の迅速化や効率化を図るといったソリューションの構築が可能と考えられる。
以上
まとめ
今回は、2015年の問2について実際に答案を作成してみました。
みちびき関連の答案は、内容的には厳しいものがあるかもしれません。
ただ、私も知らなかったことが多々あり、勉強にはなりました。